【板見浩史氏総評】

ワイン色の風景…というテーマは、具体的なようでいて難しいものです。
ワインの色だけがあればよいわけではなく、ワインがもたらす、味わい深く、穏やかで、上質で、楽しく、かつ美しい時間や空間や心情などが写真に込められなければならないからです。
意外にも初回から、その意図を汲み取った作品が多かったのは大収穫でした。

ワイン色といっても、ものにより、色彩は多様です。
このテーマをどう解釈し、作品づくりにとりくむのか、応募作品をみるのが楽しみでした。
写真審査で気づいたのは、幸せや楽しさを感じさせる作品がたいへん多かったことです。
ワイン色とは幸せ色ということでしょう。
これは新鮮な驚きでした。上位作品も、おのずとそのような作品が選ばれました。

タイトル
「ワインファミリー」


撮影場所
京都府宇治田原町


撮影機種
Nikon D3300


入賞者
　金岡 明光　様

板見浩史氏選出コメント

ロゼワインの色に染められた若いファミリーの幸せな光景を、的確なフレーミングで切り撮っています。人物は遠く小さいのですが、子に恵まれた夫婦の情感は十分伝わります。むしろ多くの桜に包まれた温かい色調の空間が人物の内面を代弁しているとも言え、ロングショットにしたことが大成功。シャッターチャンスも、とてもよいですね。

平嶋彰彦氏選出コメント

満開のサクラの下にいるだけでもうれしくなるものです。まして赤ちゃんと親子三人となれば、これに勝ることはない気がします。みているとこちらも祝杯をあげたくなります。遠からず近からずの距離感と抑制の利いたアングルが素晴らしいですね。ワイン色にときめく至福の光景をたいへん見事に表現した作品といえます。

タイトル
「夏を見送る」


撮影場所
山梨県甲府市


撮影機種
Nikon S5100


入賞者
　小松 洋子　様

平嶋彰彦氏選出コメント

夕闇せまる山々を背景に、リンドウの花一輪と帽子を、大きくうつしています。
ストロボをつかった撮影手法もさることながら、ワイン色のリンドウを鉄骨のうえに置くという発想は、はからずも現代美術のインスタレーションを彷彿させるもの。
自然を愛しむ作者の人柄を思い浮かべずにはいられない独創的な秀作だとおもいます。


 

タイトル
「スパークリングのきらめき」


撮影場所
山梨県甲府市太田町（遊亀公園）


撮影機種
Nikon Ｄ610


入賞者
塩島 みどり　様

板見浩史氏選出コメント

水面全体の質感と色が白ワインをイメージさせて清々しい。おそらく紅葉の映り込みなのでしょうが、右下の色彩も画面に良いアクセントを与えています。白鳥の動きで水の輪ができた瞬間のシャッターチャンスもうまく捉えました。首の向きと左右の空間のバランスも絶妙です。